wab********さんのレビュー一覧
関根くんの恋
デキルオトコと純朴な女子のシンデレラ・ラブストーリーの傑作▼読み始めたら、チケット使い果たして終わりまで一気読み▼関根さんの背中に抱きつく孫....振り向いたらタヌキがいるんじゃないかと心底恐れる関根さん。このシーンで涙腺決壊と同時に爆笑▼こんなに切なくて甘やかで豊かな恋愛マンガはなかなかないよ▼仕事ができて、スポーツ万能、さらにその上ルックス抜群(見た目については、同意しがたい絵面だが、そういう設定なのだろう)の関根君が、純朴で素直なこと以外に取り柄のなさそうな女の子に駄々惚れになって、最後に恋が実るというシンデレラのストーリーは、女子の妄想が生み出した王道マンガのはずだが、オトコであるはずの私が読んでも胸キュンとなり、関根君を応援したくなるのはなぜだろう。これだけは謎である。
4
彼女のカーブ
女性の身体のパーツがモチーフの短編集。第1話が胸、第2話はうなじ(のほくろ)、第3話は薬指....。表紙のようなハダカのシーンがしょっちゅう出て来るわけではないし、出て来てもエロさは感じない▼エロではない。かと言って、生きるとは何か? などと人生の深遠なテツガクを感じさせるわけでもない。どの話も軽い▼むしろ、軽さが持ち味なのだろう。クスっと笑える話や「うん、これが男と女だよね」と妙な納得感のある話など、軽い中にも存在感のある不思議な作品群である。最後まで、一気に読み終えてしまった。時間とチケットを使った悔いは(あまり)ない▼銭湯で二人の女の子が出会う第5話はわかりずらい。女の子の顔が区別できなかったのが問題。登場人物がどの顔も同じに見える。双子の姉妹が主人公の話題なら、それで良いんだけどね。
4
お前の寝言がわからない
一組の同い年の男女が、ひょんなことから同居し、二人の生活の違いから起きるトラブルを面白おかしく描く一話完結もの。この流れだと大体、ラブコメになるのですが、生真面目な男子の頑張りのため、安直な方向に流れません▼恋愛を描くのでなく、他人同士が同居すると、あたりまえに生じるであろうアツレキを誇張した作品。作者自身、もしくは作者に近い人が結婚(または同棲)して「いやあ、参ったよ。実は昨日ね××なことがあったんだよ」といった類いの話がたまって、マンガにしてしまったという推測をいたしました▼文系女子vs理系男子という説明がされていますが、どこにでも起こりうることが多いです。新婚さんあるあるではあるのですが、どの回もオチがすばらしいので、読んでいて飽きません。とにかく面白いです。
3
戦海の剣_死闘
前作に引き続いた第二部。▼第1話から第52話まで、息のつまるような戦闘シーンが続き、緩むことがない。戦闘シーンだけではない。勝敗が決した後に潜水艦の乗務員を深海から救出するまでを描いた47~51巻が泣ける。▼傑作と呼ぶことにためらいはないが、あり得ない超能力を発揮する「ラビット」、潜水艦に積み込む燃料電池+リチウムイオン電池の出力で超伝導電磁石を駆動、などなど「ありえないだろう」とは思うがファンタジーだと思おう。▼潜水艦と大型の航空母艦との戦闘で白兵戦が描かれるのにもびっくりするが、スターウォーズでも一対一の白兵戦があったから、そこもあまり突っ込まないことにしましょう。▼おそらく、作者は第三部として”剣”と”くろしお”の死闘を描く構想を持っていたのだと思うが、急転直下、戦闘が描かれることなく結果だけが知らされて終わる。打ち切りになったのかもしれないが、これ以上の戦闘シーンを描くのは難しいと思ったのかもしれない。
2
アンサンブル
作品の発表は1994年、ジュリアナ東京が閉店した年である。バブル経済が崩壊。経済が急降下を続ける日本社会の中に生まれつつあった価値観をエンジンとして、極限まで突っ走った傑作。笑えて、ほろりとして、暖かい読後感に包まれる。
元トップモデルの菜摘が惚れ込んだ男はとんでもない善人にして、お人よし。某マンガのせいで「究極」も「至高」も「他よりちょっとウマイ」くらいの意味に落ちぶれているが、究極の善人・至高のお人よしとは、見ず知らずの人を助けようとチンピラに殴られる男であり、やっと手にしたボーナス全額を見ず知らずの人に貸し与える。そして「お金が戻って来なかったとしても、返せなかった人は、返せなかったことで深く傷つく」と笑って言うのだ。こんな男が夫であり、父親なのだから、菜摘と娘は赤貧の暮らしを強いられ、味噌汁の具が道ばたに生えている雑草だったりする。それでも、三人とも底抜けの笑顔で暮らしている。
トップモデルまで上り詰めた菜摘に、そのような暮らしができるのは不思議だと、彼女の過去を知る人は言うが、逆であろう。バブルの絶頂期の虚飾の経済を実際に体験したからこそ、卒業できたのだ。彼女の「リタイア」を不思議に思う人は、バブルの光と陰を心底味わっていないのだと思う。金銭的には恵まれなくても、誠実に暮らしていたい、他の人を出し抜いたり蹴落としたりする仕事はもうしたくない、そのように思ったのは菜摘だけではなかっただろう。そのような価値観を共有できる土台があって、この作品が結実したのだと思う。
4
ひらけ駒!
『ひらけ駒Return』の「あとがき」を読んで、『Return』の前に、こちらの作品があったと知りました。菊池親子が、棋士や友人と将棋を通じて交流し、成長して行く物語です。等身大の小学生棋士の日々がほんわかと描かれます。でも「ああ、こういう子が強くなるんだろうな」とも思います。
菊池宝クンの母は、最初に出て来たときは見るからにオバサンでしたが、巻を追うごとに若返り、可愛らしい顔立ちになって行きます。これも、将棋の効用でしょうか(笑。
女流棋士の描き方がすごく面白いですが、伏線が回収しきれていないもどかしさもちょっと感じます。9巻以降が書き継がれなかったためであることも、『Return』のあとがきを読むとわかります。
1
「子供を殺してください」という親たち
押川という人物は作者の創作かもしれないが、一つひとつの事案は、少なくとも部分的には事実だと思われる。読後感が、非常に重いマンガである。子は親とは別の人格だが、親の育て方によって子どもが壊れていくことがある。現実社会や親との関係を修復する方法は一つではない。押川は、手探りで子と家族、あるいは医療機関、または社会とのつながりを見つけようとする。マンガは、その地道なプロセスを追う。
うまくいくこともある。しかし、第一話で彼は言う「子どもを殺してくれませんか(略)これらはすべて俺のところへ相談にやってきた親たちのことばだ(略)ぬくもりや人間味に欠けた育てたかたをすれば、問題行動として、必ず跳ね返ってくる。それは子どもたちの心の叫びだ。親たちへの復讐だ」
心して読みたい。
5